ハナがいなくなった日、そして見つかった日

ハナが行方不明になって、見つかった日から一週間が過ぎました。

いま私のベッドの上でちゃっかり寝ているハナを見ていると、あの日のことが幻みたいに思えてきます。

毎日いろいろなことが身に起きますよね。その度に新しい記憶が頭に入ってきます。

すると一週間前の大きな出来事さえ記憶からはどんどん薄れてきて、現実が幻に思えるような…そんな経験ありませんか?

頷いているあなたは私と同年代かもね。

あの日、現実に起きたことを幻にしたくない。

だったらブログに残せばいい!しばらく書いてないし(笑)

…というワケで、今回起きたことをブログに残します。

忙しいから出かけました

ハナが行方不明になった場所は、標茶(しべちゃ)町の塘路(とうろ)。

塘路は我が家から車で40分くらいで行ける場所です。

釧路湿原国立公園の中で最大の湖、塘路湖(とうろこ)があって、冬は結氷した湖の上でワカサギ釣り、カヌーツリングは一年を通じて楽しめるんですって。

↓ 2015年6月11日 18時48分に撮影した塘路湖

湖周辺には鹿やキツネはもちろん、オオワシやアオサギ、カワセミの姿も見られるっていう情報を目にしたんです。

で、決めました。3月9日(土)は、カワセミに会えるかも知れない塘路に行こう!って。一年で一番忙しい年度末で、やらなきゃならない事が山ほどあるから出かけようって。

え?言ってること変?忙しくて時間が足りないはずなのに何で出かけるのかって?

やる事がいっぱい。しかも楽しいとは言えない事も多いときは、それを精力的にこなすエネルギーを充電しに出かけるのが私のやり方なんです。

「やらねばならない」「遊んでる場合じゃない」っていう気持ちで事に当たっても、結局少しも捗らないで一日が終わる。そんな経験を山ほどしてきましたもん。

だから超繁忙期だけど気分転換に出かけました。ハナを連れて。

一緒に時間を過ごしたい人がいるから行きました

カワセミをこの目で見るという目的もあったけど、出かけたいと思った一番の理由は一緒に時間を過ごす人の存在。

「カワセミを見に行きませんか?」と誘ってくれた、みぃな(@HHisasue)。

釧路の自然の素晴らしさをまだ体験できていない私の弟。

塘路で他にはないステキなモノづくりとカフェをしているカツさん(@ka2_katsuya)。

釧路の自然に囲まれながら、カツさんのカフェでコーヒーを飲んで、大好きな人と一緒にお喋りしたりバードウォッチングしたり。

そういう時間があれば、家事も仕事もアレもコレも楽しい気持ちで出来る!

それと…慣れない釧路で毎日がんばってる弟に、わずかな時間でも気分転換して欲しいという気持ちも小さくなかったです。

↓ カツさんのカフェの看板犬、リドちゃん

軽く考えてました

3月9日午前11時。弟の運転する車に私とハナが乗って釧路を出発。みぃなとは塘路で合流する約束で、まずはカツさんのお店「 craft ka2 + RAGTIME COFFEE 」へ向かいました。

カツさんの奥様や看板犬のリドちゃんとの再会に、私のテンションは早くも上昇。ちょうど昼食時間だったので、生パスタが美味しい近所のプレッツェモーロさんでランチを済ませてからカツさんのコーヒーをいただくことに。

その間、ハナはカツさんのお店に預かってもらうことにしました。これがいけなかった…軽く考えてました、私。この軽い気持ちのせいで、何人もの人に迷惑をかけてしまった。今更ながら反省してます。

ハナにとってカツさんのお店は初めての場所。車に乗っての遠出もハナの人生、いや犬生?、3回目の経験。いきなり車に乗せられて、いきなり知らない場所に連れて行かれ、10分くらいで置き去りにされる…ハナにとって、それはこの上なく不安なことだったに違いありません。

ハナがわずかな隙を見つけて大脱走をしたのは、無理のないことなんです。

驚いたのはカツさんと奥さん、そしてカツさんのお店に来ていたお客様。すぐに表に出てハナを呼び戻そうとしてくれたそうです。

あたりは国道391号線が近い場所。一刻も早く身柄を確保して安全な場所へと思って下さる皆さんの気持など分かるはずもないハナ。追ってくる人影に身の危険を感じたのか、何と、生まれて初めて川にダイブ!!向こう岸に渡って茂みの彼方に走り去ってしまったとのこと。

その時の私?パスタ屋さんで、のんきに牡蠣パスタを頬張っていました。

捜索活動1日目

ハナ脱走の第一報が私の耳に入ったのは、たぶん12時半。

それからは、みぃな、弟、カツさん、カツさんのお店に来ていたご夫妻、私の6人で周辺を探しました。ハナを最後に見た湖畔の茂みは徒歩で、湖周辺の道路が通っている場所は車で。

ただ…3時間近く探し回ってもハナの姿は見えないし声すら聞こえない。陽はどんどん傾いてくる。陽が沈めば真っ暗な塘路での捜索は不可能です。

そんな時、カツさんが友人である釧路湿原とうろの宿のご夫妻に頼んでカヌーを手配してくれました。夕焼け前の静かな静かな川を進むカヌー。そのカヌーの中から湿原の茂みに向かって、何度ハナの名前を叫んだことか。

しかしハナの気配は全く無し…

16時50分、思い切って捜索中止を決断。塘路の交番に遺失物届けをして、帰宅してから一本のツイートをしました。

人が多くいる場所じゃない塘路で、ハナを目撃する人がいるだろうか?そんな気持も大きかったけれど、思い込みで行動しちゃダメ。自分の軽はずみな行動で起きてしまったことに対して、自分が出来ることは何でもやろう。そんな気持での一本です。

驚きの展開

ハナの帰りを誰よりも心配していた夫、湿原の中を懸命に捜索してくれた弟、そして私の三人で、翌朝の日の出とともに捜索を再開しよう。そう決めてベッドに横になってスマホを覗いてみると…そこには思いもかけない状況が待っていました。

日頃お付き合いのある釧路の友達、エクスマの仲間、ツイッターで交流のある人たち、そして見ず知らずの人たちまでもが、私のツイートをリツイートしてくれていたんです。ハナを心配して沢山の人がコメントを寄せてくれていました。

見ず知らずの方の一人からは、こんなアドバイスまで。


釧路のラーメン屋さん「麺や北町」の店主たまちゃんが、お店の片付けや仕込みが終わった後の疲れた体で深夜の捜索に出かけてくれたと知ったときには…

ハナが見つかるまで、当事者の私がオロオロしたり泣いたりしない。感情的になって判断を誤ることがないようにしよう!と自分に言い聞かせていたけれど…涙があふれました。

フェイスブックに投稿していなかった私に代わって、いち早く投稿してくれた標茶町の家具さんの平田店長(@BassTks

新聞に迷い犬として掲載してもらえるように動いてくれた、釧路のセレクトショップ社長のフリフリ(@r2_3g

地元のFMラジオ局に情報拡散をお願いしようと動いてくれた、サンキャッチャー作家のナンシー(@tokimekilab)や、そのお願いを快諾してくれたラジオ局社長のゆかね(@yuka325

カツさんのお店に居合わせたご夫妻も、ずーっと気にかけてくださって、インスタグラムで呼びかけてくれたんです。

ありがたくて、ありがたくて、翌朝早く起きなくちゃいけないのに気持ちが高ぶって寝付けませんでした。

捜査活動2日目

二日目の朝、弟は5時半には現地に到着。既にカツさんが捜索を始めてくれていました。

私と夫は30分遅れで到着。ハナをひときわ可愛がってくれているうっちー(@ucchi946)も、膝の痛みをおして捜索に加わってくれました。

そして隣人のヒサコさん(@mamahisako1)とリノ(@pua_lino722)。朝早い出発だというのに、差入れにオニギリまで作ってきてくれました。

6時過ぎから捜索を始めて約1時間。ハナが姿を消した一帯は既に何度も探しています。

もう他に探す場所は無いよね。知らない場所だものハナは遠くまで歩いて行かないよね。きっと逃げた場所の近くに戻ってるよね。ハナは臆病者だから身を隠せるような場所で息をひそめているよね。

何となくそんな気がして、灌木とヨシの茂る場所に向かって優しく声をかけてみました。前日みたいに大きな声で呼びかけると、ハナは叱られているように感じるかも知れない。そう思って。

同じ場所に立ち止まって何度も「ハナ〜、ハナ〜」と呼んでいたその時、ヨシの茂みの向こうから「カサッ」っと生き物が動く音がしました。

ん?鳥?キツネ?

今までよりもさらに優しい声で「ハナ〜、ハナ〜」と呼ぶと、またもや「カサカサッ」と音がします。これを繰り返していたら…ヨシの茂みの奥からハナの顔が!ハナがいた!!

ところが、湿原に置き去りにされたハナは再会に驚いたのか声も出さず、私に駆け寄ることもなく一度姿を消してしまいます。

再び見失ったらどうしようと焦る気持ちを抑えて優しく名前を呼び続けたら…ハナはようやく私の足元まで来てくれました。

その時の様子をリノが撮影してくれていました。ハナが見つかった瞬間、ヒサコさんが良かった良かったと喜んでくれている声を聞くと、いろんな想いがまた込み上げてきます。

そして、うっちーも。

「良かったー」と「ありがとう」しか言葉が出ない瞬間でした。

その後

ハナを発見したとき、私はハナを散歩させるときに使うリードを持っていませんでした。なので発見場所から皆の待つ場所までハナは抱っこです。

ハナの重さが腕にズシリと来て、途中何度もしゃがみ込まなければ歩けないくらいでした。

やっと国道までたどり着いた時、前日から足がつるほど歩いてハナを探し続けてくれたカツさんの姿がありました。カツさんに「見つかりました!」と報告した瞬間は、今思い出しても涙が出ます。カツさんも「良かったー、良かったー」って言ってくれて。ホントにもう、それしか言葉が出ないんです。カツさんが前日からどれだけ心配して下さったのかが痛いほど伝わって、嬉しいと同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

それから釧路に向かうと、自宅前では2日目の捜索に向かうはずだった友人達がハナの帰りを待っていてくれました。みんなの顔をみてホッとしたし嬉しかった〜

今こうして一週間前を振り返って思います。

普段あまり気にもしていないけれど、ホントに多くの人に助けてもらって「普段」が成り立っているんだなって。自分が決めた自分の行動が、時に多くの人に影響を及ぼすんだなって。それは良いこともあるけど、悪いことだってあるんだなって。

決断より行動が大事だけど、行動する前に一瞬思いをめぐらせて、周囲への影響を考えることが必要だなって。客観性が落ちる年齢域に入ってきている私は特にね。

今回のことは決して幻にしないで、感謝の気持をいつかどこかでカタチにしてお返しします。

あと10日でハナと初めて会った日から一年。

みんなに助けてもらったハナを、お兄さん犬のカブキと一緒にこれからも大切に育ててゆきます。

↓ 初めて会った日のハナ 2018年3月27日

お世話になった皆さん、心配して下さった皆さん。

ありがとうございます。

そして、ごめんなさい。

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1959年千葉県生れ札幌育ち。事務員をするつもりで就職した会社でSE部門へ。精神と体を鍛えられつつ仕事の楽しさを知る。1986年、結婚を機に来た釧路で株式会社アシストを創業。以来 『仕事をもっと楽しくするには?』 に知恵を絞る。 2014年に 『葉子の部屋』 を、2015年に『つながり空間まめ』をアシスト内にオープン。テーブルを囲んでのお喋りから多くを学んだ子供時代の経験を仕事にも生かしたいと試行中。 絵を描くこと、モノを作ること、自然の中に体を放り込むことが好き。

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